帝王切開手術の流れ

手術室に入る前に手術着に着替えます。手術着は病院によっても違いますが、すぐに脱げるようにマジックテープなどで簡単に固定するものです。

 

手術室へ移動して手術台に乗るときは、多くの場合全裸です。手術でお腹を切る場所はほんの少しなのですが、感染を防ぐために広い範囲に剃毛や消毒をするためです。出産時とはいえ、全裸になるのは抵抗があるものです。病院によっては清潔な布などで可能な部分は覆ってくれるところもありますから、事前にその病院の手術方法を確認しておくのもいいかもしれません。

 

剃毛する範囲は、これもまた病院によって大きく異なります。胸の下からお尻の方まで、びっくりするくらいきれいにそってしまう病院もあるし、手術する箇所の周辺のみ、というところもあります。執刀する医師が必要だと考える範囲で違ってくるのですが、出産という大きな流れの中で、全裸ということも含めて、手術においては「まな板の上の鯉」と腹をくくってしまったほうがいいときもあります。医師や看護士は感染症や合併症から赤ちゃんとお母さんを守るために必死にがんばってくれていると信じましょう。

 

手術室ではお母さんの体の変化をいち早く見つけられるように、血圧計や心電図計が取り付けられます。赤ちゃんの心音もモニターで常に観察されていますから、そのときそのときに必要な処置を医師はすぐにとることができるようになっています。

 

説明を受けていたとはいえ、初めての帝王切開のお母さんはびっくりの連続でしょう。しかし、赤ちゃんの誕生を目前に控えているときです。お母さんには、次々に乗り越えなければいけないステップがまだまだ続きます。一人の命を受け止めていく母としての第一歩です。

予定帝王切開での麻酔は下半身の感覚を、麻痺させる局所麻酔です。お母さんは手術中でも意識があるので、赤ちゃんが生まれるとすぐに対面することができ、産声を聞くこともできます。麻酔の種類は、腰椎麻酔と硬膜外麻酔があります。

 

腰椎麻酔は背骨と背骨の間に細い注射針で麻酔薬を注入します。注入する場所はクモ膜下膣という場所で、ここに麻酔薬を注入することで脊髄から出ている神経をしびれさせて一時的に感覚をなくします。腰椎麻酔は持続時間が短いので、手術が長びくような場合はほかの麻酔方法と併用します。

 

硬膜外麻酔は脊髄の硬膜外膣に細い管(カテーテル)を挿入して麻酔薬を注入し、下半身の感覚を麻痺させる局所麻酔です。手術中でもカテーテルを通して麻酔薬を注入できるので、手術の経過によって時間が延びても対応できます。また、術後、すぐにはカテーテルはとってしまわないので、痛みがひどいときの痛み止めをそこから入れることもできます。

 

緊急帝王切開では全身麻酔になることもあります。手術中にはお母さんの意識がなくなるので出生時の対面は残念ながらできません。また、麻酔の影響で頭痛や吐き気を感じることも、局所麻酔より全身麻酔のほうが多いようです。

 

麻酔はアレルギーテストを行ってから打ちます。後遺症はほとんどありませんし、赤ちゃんにも麻酔の影響は出ません。また、麻酔が効いていることを確認してから手術を始めるので、麻酔が効いていないことでひどい痛みを経験することはありません。ただし、麻酔を打つときは痛みを感じます。また、麻酔による頭痛や吐き気といった症状も人により違いがあるようです。

 

術後、麻酔が切れると手術による傷の痛みと、後陣痛でお母さんは一時的ではありますがつらい時間が訪れます。そんなときは我慢せずに医師や看護士に訴えて、できるだけ痛みを除去してもらいましょう。

帝王切開の手術は、最初にメスが入れられてから終了するまで30分から1時間程度です。開始して10分ほどで赤ちゃんと対面できます。また、手術室には執刀医のほかに補佐の医師、麻酔科や小児科の医師、看護師などたくさんのスタッフが待機しています。帝王切開の手術の途中で、お母さんや赤ちゃんに、もし、何かが起こっても直ちに対応できる状況になっています。

 

手術に先立って麻酔を打ちます。麻酔が効いたことを確認してから手術が始まります。下腹部にメスを入れる方向ですが、縦に切るか横に切るかは、医師の方針やお母さんの希望のほかにお腹の中の赤ちゃんの位置にもよります。皮膚から子宮に向かって、体は何層もの組織が重なっていますから順にメスを入れていきます。ちなみに子宮は特別のことがない限り横に切開されます。子宮の壁を切開して卵膜が破られると、羊水が溢れます。そして、医師の手によって子宮から赤ちゃんが取り上げられます。

 

赤ちゃんはすぐに待機している小児科の医師に引き渡されます。赤ちゃんの鼻や口に詰まっている羊水を吸引するなど、出生後まず最初に施される処置が済むと、やっとお母さんとの対面です。看護師に抱かれて赤ちゃんはお母さんの近くまで来てくれます。

 

とはいえ、お母さんがゆっくり赤ちゃんと過ごせる時間までに、果たさなければならないことがまだまだたくさんあります。赤ちゃんもまた、急激に外界に出されるわけですから、体温を一定に保ってあげる必要があります。そのためにも赤ちゃんは出生後、すぐ保育器に入るケースが多いようです。

 

局所麻酔を受けている母さんの下半身は感覚がないのですが、なかには痛みはないが切られている感覚や子宮に人の手が入っていく感覚は感じられる人もいます。手術ですから出血を伴います。お母さんの体のダメージを最小限に抑えるべく、速やかに手術を終えるよう医師もまたがんばっているのです。

赤ちゃんがお母さんのお腹から取り上げられると、いよいよ今度はお腹を閉じていかなければなりません。まず、赤ちゃんが取り出された子宮から胎盤が取り出されます。赤ちゃん同様、医師の手によって取り出されます。お母さんは麻酔が効いているとはいえ、かなりお腹を引っ張られるような感じがするようです。

 

子宮を閉じていく際に使用する糸はお腹の中で自然に溶けてしまう吸収糸ですので、後で抜糸の必要はもちろんありません。子宮の縫合が終わったら出血がないか確認します。このとき、子宮の傷口とほかの臓器の癒着がないように、やはり自然に溶けるシートで保護することもあります。また、子宮を閉じる前に子宮収縮剤を注射することもあります。

 

次々に、手術を始めたときとは逆にお腹の組織を縫合していきます。お腹の表面以外はすべて、解ける糸を使用します。最後に皮膚の表面を縫合して手術は終了します。

 

お腹の皮膚にできた傷口を縫合するものですが、従来用いられていた手術縫合用の糸を使用する場合のほか、溶ける糸や大きめのホッチキスのような器具(ステープラー)で何箇所もとめる方法があります。従来の糸を使って縫合したときは、経過にもよりますが、術後1週間前後で抜糸が行われます。引きつっていたものが解放されたように痛みが消えます。ただし、抜糸のときはある程度の痛みはあります。

 

抜糸ではありませんが、ステープラーも押さえの芯(形状もホッチキスの芯をちょっと大きくしたものという感じです)を抜きますが、抜くときはプスプスとスムーズに抜けるので、「痛い」と感じるほどではありません。傷口もステープラーを使用したときのほうが、きれいになるようです。糸を用いると切開した傷に対して垂直に短い跡が残りますが、ステープラーの場合さしたところだけ小さく跡がつきます。

帝王切開の手術の縫合に使われるものは、従来から使用されてきた糸のほかに、時間が経って傷口の回復とともに自然に溶けてしまう吸収糸、ステープラーという見た目も使用方法もホチキスのようなものなどです。何を用いるかは、必要性と執刀医師の判断によります。

 

抜糸が必要になるのは従来の手術縫合用の糸です。傷の回復具合を見ながら、大体1週間前後で抜糸が行われます。人の体の傷は、自然に任せると傷が広がっていく方向に力が働いてしまいます。それを押さえて傷口を寄せているのですから、縫合の引っ張る力は相当に強いものだといえます。ですから、傷跡の痛みとは切ったことそのものの痛みもさることながら、縫合によって周りの皮膚や組織が引きつられる痛みが大きいのです。

 

それが傷口がくっついて抜糸を行うと解放されたように楽になります。自然に溶ける吸収糸で縫ってある場合でも、あまりにも引きつり感がきつい場合には抜糸を行うこともあります。抜糸といっても糸を全部抜くということではありません。一目ごとに結び付けてある目を切っていくのです。それによって肌を強引に引っ張っていく力をほぐします。

 

ステープラーは、芯そのものをお腹から抜きます。こちらも傷の回復具合を見て、同じように1週間前後で抜いていきます。抜くときは垂直方向にすっと抜けていくので、痛みはあまり強くはありません。術後に残る傷跡も、ステープラーのほうが早くきれいになるようです。

 

抜糸の後は、傷口が開かないように、きれいに治るように傷と垂直方向に張るテープがあります。病院で処置してくれるところもあります。もちろん、自己判断だけでテープを使用することは、傷口の悪化を招く危険性もあります。しばらくは、衣類などでこすれると傷は痛みますから、保護の意味でも使用を医師に相談してみるのもいいかもしれません。